メタノールについて。取り扱う時の注意点や作り方

メタノールについて。取り扱う時の注意点や作り方

メタノールはアルコールの一種で、工場の生産現場などさまざまな場面で使用されている化学物質です。アルコールというと普段飲んでいるお酒のイメージがありますが、アルコールのすべてが安全で飲めるわけではありません。ここでは、メタノールが幅広く扱われている有用性の高い化学物質である理由や、取り扱う際の注意点などについて解説します。

メタノールとは

メタノールは、アルコールの中で最もシンプルな構造式を持ちます。分子構造中に炭素原子を一つしか持たないため、同じく炭素原子を一つしか持たない炭素化合物から合成されています。
極性を持つ有機溶媒の中で同じく極性を持つ化合物や塩をよく溶かし、化学原料や工業原料として幅広く使用されています。
メタノールは、分子構造から「メチルアルコール」という慣用名がありますが、メタノールが視神経に対して特にダメージを与える物質でことから「メチル(目散る)アルコール」と呼ばれることもあります。

メタノールとエタノールの違い

メタノールは石炭や天然ガスから生成した一酸化炭素に、酸化銅-酸化亜鉛/アルミナ複合酸化物を触媒として、高圧・高温下で水素を反応させることで製造します。
メタノールは人体に有害で、体内に取り込むと代謝によって蟻酸を生成するため、飲用すると失明や代謝性アシドーシスに至る危険性があります。

エタノールは、アルコール発酵やエチレンの水和反応等で製造されています。
アルコール発酵で生成されたエタノールは酒に含まれているため飲用可能ですが、エチレンの水和反応で生成された工業用アルコールは飲用できません。
エタノールは体内に取り込むと、代謝によって酢酸を生成します。酢酸はお酢の主成分であり、人体への毒性は蟻酸と比較すると低いという特徴があります。

メタノールの性質・特徴

メタノールにはどのような性質や特徴があるのでしょうか。ここでは、引火点や臭気といった特徴やその危険性などについて紹介します。

メタノールの性質・特徴

引火点や沸点が低い

メタノールは、「引火点:11~12℃」「沸点:64.7℃」とアルコール類で最も引火点と沸点が低く、取り扱う際には高温や火花を発するような着火源から遠ざけなければいけません。
発火した場合、小規模の火災であれば水で消火できますが、薄められたメタノールが溢れて火災が広がる危険性があるため、泡消火器による窒息消火が最も安全に消火できます。この場合、泡にメタノールが吸収されないよう、耐アルコール性の泡消火薬剤を用います。
メタノールが発火すると、炎が透明ないし薄い青色であるため、特に日中は視認が困難です。また消火後に再度発火する可能性もあるため、念入りに消火する必要があります。

【有害】水に溶けやすく、独特の臭気がある

メタノールは人体に取り込むと有害であるため、取り扱いには注意が必要です。
メタノールには独特の臭気があり、臭気を感じたらメタノールが気化したものを鼻から体内に取り込んでいる状態なので、過度に吸入しないように気を付けなければいけません。
体内に取り込まれたメタノールは、アルコール脱水酵素によりホルムアルデヒドに代謝され、さらにメタン代謝酵素によって蟻酸に代謝されます。
体内において、ホルムアルデヒドから蟻酸への代謝は迅速に行われるため、ホルムアルデヒドの毒性は問題にはなりません。ただし、蟻酸の代謝能力が低いため、体内(主に視神経内)に蟻酸が長時間残留することによって毒性を発します。
蟻酸の代謝能力は種によって異なり、げっ歯類に比べて蟻酸の代謝能力が劣る霊長類は、メタノールの毒性がより強く出ることが知られています。

メタノールは非常に水に溶けやすいため、メタノールを貯蔵または取り扱う作業場には、
消防法で洗眼器や安全シャワーの設置が義務付けられています。

メタノールの主な用途

メタノールの主な用途

メタノールの代表的な用途として、ホルムアルデヒドの製造があります。
生成したホルムアルデヒドを原料として、フェノール樹脂やユリア樹脂、メラミン樹脂などのプラスチックを製造できます。
この他にも以下のような用途で使用されています。

  • 酢酸の製造工程
  • 有機溶媒としての使用
  • メタクリル酸メチルやテレフタル酸ジメチルなどのメチルエステルとして、合成樹脂や合成繊維の製造の原料としての使用
  • 接着材、塗料、農薬、医薬品としての使用
  • ガソリンに混入して自動車の耐寒燃料として使用
  • エタノールに混入して、「変性エタノール」として使用

メタノールは日常の生活に密接に関係しており、現代社会において不可欠な物質であると言っても過言ではありません。
メタノールは工業用の原料として使用されており、日本では年間200万トンほど生産されています。なお、エタノールの生産量はこの約1割強にとどまっています。
また、石油代替自動車燃料としてエタノールより安価で圧縮天然ガスと並ぶ価格競争力があり、モバイル機器を長時間稼働させるため、直接メタノール燃料電池(DMFG)が期待されています。

メタノールの反応

メタノールの溶液反応には以下のようなものがあります。

  • 燃焼時の反応で二酸化炭素と水が生成される
  • メタノールと空気の混合物を触媒上で常圧、600℃の環境で反応させることでホルムアルデヒドが生成される
  • ナトリウムと反応して、ナトリウムメトキシドと水素が生成される

メタノールの溶解度

メタノールは水やエタノール、エーテル、その他多くの有機溶媒とよく混和します。また、有機溶媒としてアンモニアや塩化水素などの物質をよく溶かすため、さまざまな化学反応で使用されています。

メタノールの作り方

メタノールの作り方

工業用などで使用されているメタノールは、一酸化炭素と水素の合成ガスを酸化銅‐酸化亜鉛/アルミナ複合酸化物を触媒として、高圧(50-100気圧)かつ高温(240~260℃)下で反応させる生成法が主流です。
なお、以前は木材から抽出した木酢液を蒸留することで生成していました。

メタノールの危険性

メタノールの危険性

工業的・化学的に安定しており有用なメタノールですが危険性もあり、その中でも代表的なものとして「引火性」と「毒性」が挙げられます。
メタノールは高い揮発性を持ち、引火点が11~12℃と常温でも容易に火が付くため、メタノールを取り扱う際には火気に細心の注意を払わなければいけません。
また、揮発したメタノールを吸い込むとメタノール中毒になる危険性もあるため、メタノールを取り扱う際には十分な換気ができているか確認し、局所排気などの設置も検討しましょう。
また、その危険性ゆえに、保管の際には密閉した容器に入れて鍵で施錠の上で保管する必要があります。

まとめ

メタノールはアルコール類の中でも安価で汎用性が高いので、化学分野はもちろん製造現場でも幅広く使用されている化学物質です。
しかし、メタノールは揮発性が高く、引火しやすいだけでなく吸引するとメタノール中毒になる危険性もあります。メタノールの特性を正しく理解した上で、安全対策を十分に行なった上で使用しましょう。